子育て応援ひろばすかりぶ

“子育て応援ひろば すかりぶ”は、「体験しながら学ぶ」情報を発信し、
横須賀で子育てをする皆さんをまちぐるみで応援します。

麻しんウイルス、そのものを退治する薬はありません(医長が教える子どもの健康 2018年7月号)

沖縄の終息宣言は出たが

6月11日、沖縄県は県内で、4週間新たな患者が発生していないことから、麻しん流行終息を宣言しました。3月下旬、旅行中の30代の台湾の男性が、麻しんと診断。沖縄県内だけでも、99人に感染したのです。愛知県では4月、沖縄旅行で10代男性が発症。その男性が受診した医療機関が、推定感染地となった事例も含め、20人弱に感染しています。

麻しんの「排除状態」

2015年、日本は世界保健機関(WHO)から、日本の土着の麻しんウイルス(D5)による感染が、確認されない「排除状態」だと認定されました。それは3年間以上、土着ウイルス(D5)の発生から流行が断たれている、条件を満たしています。以降、我国の麻しん患者は、海外で麻しん感染を受けた人が、入国した事例で、沖縄での流行は、(D8)です。

命定め

現在でも低栄養状態にあり、適切な医療環境にない発展途上の地域では、麻しんで約10%が死亡します。わが国でも、同等な環境にあった江戸時代などで、「麻疹は命定め」呼ばれていました。何故麻しんは、恐ろしいのでしょうか? 麻しんウイルスが、一時的な免疫不全を引き起こすことがあるからです。麻しんウイルスは、免疫の中心のリンパ球などで増殖し、その機能を狂わせます。免疫不全を引き起こすエイズと同様、その末期症状の、肺炎や脳炎を起こし、死に至る場合もあるのです。

流行を広げる麻しんの特性

潜伏期は約10~12日です。今回の大規模な流行のような、注意喚起がないと、10日前後も前の記憶は、薄れがちとなります。麻しんと言えば、全身の発疹です。ところが、発疹の前に、3~4日間、38度前後の発熱や咳、鼻水など風邪のような症状が出て、約1日間、一時的に熱が下がります。再度発熱と伴に、特徴的な発疹が出るのは、その後で、発疹は4~5日間続きます。感染経路は空気感染、接触感染などです。感染力は強く、麻しんの免疫がない人達に、1人の発症者がいたら、約12人に感染します。ちなみにインフルエンザは、約1人です。発疹が出れば、診断も容易ですが、それまで既に4~5日間経っています。
やっかいなことに、その発疹の出る前の時期が、最も感染力が強いのです。麻しん感染に気付かず行動してしまい、感染を広げます。

麻しんワクチン2回接種の意義

麻しん、風しんは特効薬がありません。予防接種の麻しん風しん混合(MR)ワクチンを、必ず受けましょう。2005年以前には麻しん、風しんワクチンは、1回接種でした。その当時、麻しん、風しんが時々流行、おのおのウイルスと接触し、ワクチンで得た免疫機能が、再強化されていたのです。麻しん流行のないグリーンランドでの調査で、1回接種の16年後、免疫機能を保持していたのは、全体の43%でした。現在、MRワクチンを無料で、1歳代で第1期と、小学校入学の前年の第2期に2回目の接種が出来ます。今回の沖縄の事例でも、1回接種の20代後半から40歳までの方々が、流行の主体でした。

三浦半島の接種状況

2016年度の国全体のMR接種率は、第1期:97.2%、第2期:93.1%。麻しんの「排除状態」を続けるには、両方の接種率を95%以上にすることが必要です。2016年度の第2期の横須賀市接種率:85.9%。隣接する三浦半島の市町では、横浜市の93.0%を筆頭に、全て横須賀市を上回っています。

供給問題

大人の麻しんは重症化しやすく、入院率は約40%。麻しん発症者と接触してから、3日以内に、麻しんワクチンを接種すれば、発症を抑えられます。しかし、4~5日間経ってから、発疹が出るので、手遅れになることが多いようです。また、麻しんワクチンの供給は、
今回のような大規模流行を想定していません。大人の接種はこの流行で、入荷待ちの状態になりました。必ず、小学校入学の前年の第2期接種を受けましょう。