子育て応援ひろばすかりぶ

“子育て応援ひろば すかりぶ”は、「体験しながら学ぶ」情報を発信し、
横須賀で子育てをする皆さんをまちぐるみで応援します。

夏の疲れは、自律神経の疲れ(医長が教える子どもの健康 2018年9月号)

自律神経は、いったい何をしているの?

自律神経は、心臓、肺、消化器の活動や体温などを自動調整します。自律神経は、興奮状態の交感神経と、鎮静状態の副交感神経に分けられ、シーソーみたいにバランスをとっているのです。全力疾走すれば、交感神経が優位に働き、心拍数、呼吸数が増加し、胃腸の動きは抑制されます。全力疾走は、私達の意志ですが、心拍数、呼吸数の増加は、私達の意志ではありません。疾走により必要になる筋肉に、より多量の血液や酸素を送れるよう、自律神経が勝手に、調整してくれるのです。

働く自律神経

赤ちゃんの平熱は、大人に比べ0.5℃ほど高いようです。その平熱を自律神経の働きにより、36.5℃近くに保ちます。暑さに対しては、次の2つが、自律神経の対応です。一つは湿性熱放散の発汗と、もう一つは皮膚から熱を逃がす、乾性熱放散があります。乾性熱放散は、皮膚近くの血管を広げ、体の奥から熱くなった血液を、皮膚近くに運ぶのです。もし、外気温が体温に近ければ、外気温と皮膚温の寒暖差が少なく、乾性熱放散は困難になります。熱中症になり易い年齢は、幼児と高齢者です。何故なら自律神経機能は、10代でピークになり、70代は、10代の約8分の1になっています。幼児と高齢者の自律神経は、簡単に疲れてしまうのです。南国では、大人でもお昼寝の習慣がありますが、鎮静状態の副交感神経を優位にするのに、大いに参考になります。

自律神経の疲れにマスクをする前頭前野

額のすぐ後ろにある前頭前野は、思考、創造性、意欲、達成感などを発揮する、脳の最高の司令塔で、ヒトの文明に深く貢献して来ました。我々が社会生活を営むために、「本能の内なる声」を前頭前野は制御して来たのです。「本能の内なる声」を発する脳の司令塔は、前頭前野より下位にある、脳幹と呼ばれる部分の周辺にあります。「本能の内なる声」には、自律神経の疲れ(SOS)もあるのです。本当は自律神経の疲れも残っているのに、前頭前野によりマスクされ、無理をしてしまいます。例えば、野生動物にはない、過労死です。野生動物はある程度、腹を満たせば、もう「餌」に拘りません。ヒトのように「餌」を貯蓄するために、さらに無理をして過労することはないのです。

意識を失う熱中症もある

ヒトの体温は通常、42度以上にはなりません。42度以下にするのに、一番頼りは「汗」です。体内の水分が数%減ると、のどが渇くと云われます。しかし、「まだ、頑張れる」と前頭前野が、「のどの渇き」という「本能の内なる声」を消すことも。こまめに水分補給に努めましょう。夏の甲子園でも、プレー時間が長くなった場合、試合を中断し、水分補給のため休憩を入れました。熱中症の症状は、めまい、けいれん、脱水症状、大量の汗、頭痛、吐き気や嘔吐、だるさ、意識がおかしいなど。

熱中症の対処法

・涼しい場所に速やかに運ぶ
風通しの良い日陰や、クーラーの効いた室内などへ誘導しましょう。
・脱衣と冷却
衣類を緩めたり脱がしたりして、体から熱の放散を助けましょう。顔や身体に濡れタオルを当てたり、霧吹き等で水を掛けたり、ウチワや扇風機で風を送りましょう。氷嚢やアイスバックで、動脈に近い場所(脇の下、首筋、足の付け根など)を冷やせば、なお効果的です。
・水分補給
意識があり、吐き気や嘔吐がない場合は、冷たい水分を補給しましょう。スポーツドリンクや、食塩水(水1リットルに食塩2g)を少しずつ、何回にも分けて与えれば、水分吸収を助けます。もし、吐き気や嘔吐がひどく、水分を受け付けない場合は、病院で点滴治療を受ける必要もあります。
・直ちに救急車
「呼びかけや刺激に対する反応がおかしい」、「応えない」時には、経口から水分を与えてはいけません。水分が食道以外に入り、水分吸収は望めないのです。体温が40度を超えているのに、汗が出ていなければ、自律神経が破綻してしまった、熱射病の可能性があります。直ちに救急車を呼びましょう。そして救急車が到着するまで、とにかく冷却を続けることが重要です。