子育て応援ひろばすかりぶ

“子育て応援ひろば すかりぶ”は、「体験しながら学ぶ」情報を発信し、
横須賀で子育てをする皆さんをまちぐるみで応援します。

ロタウイルスワクチン(医長が教える子どもの健康 2019年12月号)

 現在厚生労働省では、ロタウイルスワクチンを来年の10月以降、定期接種にできないか検討しています。定期接種になると、予防接種にかかる費用が公費負担になることが多いので、子育て世帯にとっては朗報です。

 ロタウイルスは急性の胃腸炎を起こすことが多く、乳幼児期にかかりやすい病気です。ロタウイルスは感染力が強く、ごくわずかなウイルスが体内に入るだけで感染してしまいます。ふつう、5歳までにほぼすべての子どもがロタウイルスに感染するといわれています。大人はロタウイルスに免疫があることが多いので、症状が出ることはあまりありません。しかし、免疫のない乳幼児は、激しい症状が出ることが多くあります。主な症状は、水様下痢、吐き気、嘔吐、発熱、腹痛です。脱水症状がひどくなると点滴が必要となり、入院が必要になることがあります。5歳までの急性胃腸炎の入院患者のうち、40~50%前後はロタウイルスが原因と言われるほどです。

 感染者の下痢便1グラムの中には1000億から1兆個のロタウイルスが含まれているといわれています。 10~100個くらいのロタウイルスが口から入ることで感染します。ロタウイルスは、患者の便に大量に含まれますので、患者の便を処理した後、たとえ十分に手洗いをしても、手や爪に数億個ものウイルスが残っていることがあり、ロタウイルスが付いた手などから感染が広がっていきます。

 ロタウイルスに感染すると、2~4日の潜伏期間の後、水様下痢や嘔吐が繰り返し起こります。その後、重い脱水症状が数日間続くことがあります。発熱や腹部の不快感などもよくみられます。合併症として、けいれん、肝機能異常、急性腎不全、脳症、心筋炎などが起こることがあり、死に至る場合もあります。

 現在、ロタウイルスに効果のある抗ウイルス剤はありません。このため、脱水を防ぐための水分補給や体力を消耗したりしないように栄養を補給することなどが治療の中心になります。脱水症状がひどい場合には医療機関で点滴を行うなどの治療が必要になります。 下痢止め薬は、病気の回復を遅らせることがあるので医師に相談しましょう。

 感染を広げないようにするには、オムツの適切な処理、手洗いの徹底などが必要です。オムツを交換するときには使い捨てのゴム手袋などを使い、捨てる場合はポリ袋などに入れます。手洗いは指輪や時計をはずし、せっけんで30秒以上もみ洗いします。衣類が便や吐物で汚れたときは、次亜塩素酸ナトリウム(家庭用塩素系漂白剤)でつけおき消毒した後、他の衣類と分けて洗濯しましょう。ロタウイルスにはアルコールなどの消毒薬はあまり効かないので注意してください。

 日本では、2種類のロタウイルスのワクチン(単価と5価)が承認されていて、任意で接種を受けることができます。対象者はいずれのワクチンも乳児であり、具体的な接種期間は、単価ロタウイルスワクチン(2回接種)の場合は生後6~24週の間、5価ロタウイルスワクチン(3回接種)の場合は生後6~32週の間です。ただし、どちらのワクチンも1回目の接種は14週6日までが推奨されます。ロタウイルスワクチンは接種時期が遅くなると副反応のリスクが高くなるので、乳児期のなるべく早い時期での接種が推奨されています。乳児期の予防接種は以前に比べて増えていますので、かかりつけ医と相談して計画的に接種しましょう。

 参考:厚生労働省ホームページ 感染性胃腸炎(特にロタウイルス)について
 https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou19/Rotavirus/top.html